霧 ウラル

桜木紫乃さんの『霧』を読んだ。
ヤクザものというか男前のヤクザ設定が凄く好きで、二次元での話。
少し本屋で読んで購入した。
好きかも、と思って。

今日から海峡の鬼になる

それは、相羽のことだと思った。
優しい顔をした鬼は、相羽のことだと思っていた。
そう期待をして、読み進めていた。
主人公は珠生。
この話は、珠生と相羽の恋の話ではなかったのだ。
珠生の姐として、相羽珠生として生きていくその姿の話だった。

相羽は、珠生の事を愛していたのか。
よく分からなかった。
愛していなかったわけではない。
でも、他にも通う先を、愛を注ぐ先を作らずにはいられないのか。
スミには恋をしていたのか。
きっと、真央のことは愛していたのだろう。
珠生との間に、子供がいなかったから、余計に。
あの時最初の頃に恋をしていたのは珠生だけだったのか。
そういうあまっちょろいだけの話ではないのか…。

だいたい私はその本の人に恋をするというか、好きになることで夢中になっていく。
珠生を通しながら物語を進めて、相羽に恋をするつもりだったのだ。

なのに、スミの所へ通う相羽。
しかもそのスミは姉の智鶴のところで働いている使用人。
相羽が気付いていなかったはずがない。
それだけスミの事を好いていたのか。もしくは気付いていなかったのか。
木村もか?あの切れ者の木村がか?

相羽を素敵に思う時もある。
珠生を大事にしていなかったわけでもない。でも、一番ではなかったはずだ、絶対に。絶対に。
そこが一番、私が相羽を好きになれない。

わからない。
相羽が何を考えていたのか。
どうして、組長になったのか。

最後、相羽が死んでから、つらすぎて読み進める手が止まった。
声をあげて泣いた。
もうなんかファンタジーでもいいから、実は木村が相羽だったとかないのか、とか思いながら。あの相羽は偽物、影武者とか。
しかし私の期待は儚く。世界は残酷だ。
つらくてつらくて、たぶんもう一度読むことはないと思う。

幸せになってほしいと思う。

誰も泣かせたくないといった珠生に、そうしたいと思っても誰かを泣かせてしまうと言った相羽は好きだ。
珠生の実家の会社を守るために、珠生の願いの為に動いた。
一緒に泥をかぶりましょう、と親父さんに言って。

珠生だけではダメだったのか。

1人だけを愛するなど、無理なことなのだろうか。

考えるほど、泣けてくる。
無理、かなしい。

相羽のアホボケとしかもう…。
結局惚れた方が負け、なのか。